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炭疽菌について

感染対策部長 川名林治

 米国を中心にバイオテロによる炭疽(Anthrax)が世界の関心を集めています。
 炭疽は元来、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどに感染する最も恐ろしい伝染病であります。
 ヒトでは畜産やその加工品を取り扱う地方によく見られました。
ヒトが感染すると、皮膚炭疽、腸炭疽、肺炭疽を起し、重篤な症状を示し、致命率も高いものでした。
 炭疽菌(Bacillus anthracis)はグラム陽性の大桿菌で、芽胞を形成すると極めて強い抵抗性があり、長年にわたって生存します。
一般に強烈な病原性があります。
 1965年(昭和40年)8月、岩手県西根町平舘で炭疽で死亡したウシを解体した方々の皮膚炭疽7名、腸炭疽11名が発生し、土谷医師に入院加療を受けました。
他に腸炭疽の疑い約200名。
私は依頼を受け、同院に直行し、直ちに患者さんたちに細菌検査を行い、迅速診断で炭疽菌の分離、同定を実施し、確定診断を下しました。
また別の病牛を解体した業者数名が皮膚炭疽に罹患し、そのうち1名は岩手医大に入院しました。
解体された肉も販売されるなど、当時はパニック状態になりました。これらの患者さんはいずれも完治し死亡者はゼロでした。
 日本でのヒトの例は、この岩手の発生が最多で30年間に僅か数名です。
その後、私は電子顕微鏡での炭疽菌の研究などを行いました。
もう、36年あまり前の経験のことです。
まさか今回の米国の肺炭疽などの大問題が起こるなどとは考えてもおりませんでした(バイオテロの点から、念頭にありましたが)。
 日本で、炭疽をみたり、炭疽菌を研究したドクターはほとんどいないと云えますので、目下、その経験を生かし、感染予防の面からお役に立てればと、学会の要請を受けて微力を尽くしております。
 本院では、小生や昆先生が経験しております。万一に備えて、対応を心がけたいと思っております。

皮膚炭疽の患者さんの特有な病変 グラム染色した炭疽菌
長い連鎖を作り、芽胞を形成します
血液寒天培地上に増殖した炭疽菌の集落 増殖中の炭疽菌の走査電子顕微鏡下写真

 

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