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花嫁の父                          副理事長 小暮 信人

 

     

 2ヶ月前、長女智子がセンチュリーハイアット東京で結婚式を挙げた。
 娘は、何でも自分で決めて、さっさと行動する、しっかり者だが心配な娘である。
 母と家内は、式では着物を着てほしいと云っても、お父さんとバージンロードを歩くのが夢だったと主張した。
 結婚式の前夜や教会でのシーンは、今まで何回も映画で(私の家は映画館を経営)みてきて、私なりの期待はあった。
 独身最後の自宅での夕食は、家族で賑やかに子供時代の話をしながら食べた。
 寝る前に娘からあいさつがあるのかと待ったが、「お父さん明日よろしくお願いします。おやすみなさい。」と自分の部屋へ行ってしまった。一人でいろいろ考えていたらしい。
 結婚式当日は、お仲人さんもいない新郎新婦の友人中心の式なので、落ち着いた気持ちで始まるのを待つことができた。
 いよいよ教会で式をあげる時間を知らされた。急に周りが静かになって、ドアの外に娘と2人だけになった。
 娘が私の腕をしっかり組んで、うなずいてにっこり笑った。いつの間にこんなに綺麗になったのかと瞬間驚いた。 
 教会の扉が開いて、皆様の祝福の拍手がいっせいに起こった。
 一歩二歩と前進した時、急になんだか胸が込み上げてきた。 
 どうしてこんな気持ちになるんだろう。
 ああ、これが娘が夢にみていた「花嫁の父」との光景なのかと思った。
 どうにか涙を流さずに、新郎の許へバトンタッチできた。賛美歌が心に響いた。
  一生涯忘れない感動的な式となった。
 披露宴最後の娘からの両親への手紙には、女房は最初からハンカチを使いぱなしで、私も堪えきれずに涙を拭いた。
 娘の親への感謝の気持ちが、充分に伝わってきた。子供は親が考える以上に両親を思い心配しているものだ、と思った。
 これからも娘夫妻を支えてくれる友達中心の結婚式もいいものだ。と、今では思っている。
 息子夫婦に長女が生まれ、7ヶ月の孫に会うと、仕事の苦労はとんでいってしまう。  
  亡父が孫のほおに顔をつけてなめるように可愛がった姿が目に浮かぶ。
 娘夫婦にも、早く孫が出来るよう願っている。


            

                      初孫

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