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診療支援システムについて           循環器科部長  生内 久人

 近年、医療を取り巻く情勢が益々厳しくなってきている。
 医療費の増大に伴い、医療保険の財源は底をつき、国民皆保険の制度の維持自体が危機的状況に陥っている。
国民からは医療機関が儲け過ぎているのではないか、金額に見合う医療が提供されていないといった不満も募ってきている。
 今後は医療の効率化(医療の質の向上とコスト削減)、安全性の向上、情報の透明化による患者さんの満足度向上が要求されるであろう。
 そういった点を踏まえ、個々の医療機関では病院理念・ビジョンに基づき医療制度・医療供給体制の変化に即応できる病院機能実現のための基盤整備が必要となる。
 その手段の一つとして、近年診療支援システムとしての電子カルテの導入が行なわれてきている。
 
 最近「医療のIT化」「電子カルテ」などの用語や記事が度々登場するようになってきたが、平成11年に当時の厚生省が真正性、見読性、保存性の3条件を満たせば電子カルテを法的に認めるとの見解を示し、平成13年には厚生労働省が保険医療分野の情報化にむけてのグランドデザインで、平成16年度までに全国の二次医療圏ごとに少なくとも1施設は電子カルテを普及し、平成18年度までに全国の400床以上の病院の6割以上に電子カルテを普及することを提言したことによりその本格的な導入が始まっている。
 当院でも昨年末より電子カルテ導入の検討がなされており、準備委員会を立ち上げ議論を重ねている。
 
 それでは電子カルテとはどのように理解されているであろうか。 
オーダリングシステム、画像・検査管理システム、診療録支援システム、看護支援システム、電子レセプト請求などが頭に浮かぶであろうが、電子カルテの定義ということになると非常に曖昧であった。本年5月に医療情報学会で定義が示されたが、紙面の都合上詳細は割愛する。
 
 電子カルテ導入により実現されることとしては、予約システム・自動受付機・案内表示システムなどによる患者サービスの向上、紙のカルテ・伝票、X線フィルムなどを電子化することによる診療の効率化と保存スペースの節約、診療情報の多目的利用(レセプト、紹介状、各種証明書などを容易に作れる)、診療情報のデータベース化による医学研究・病院管理・経営分析、情報の共有・医療事故防止のための各種チェック機能・クリティカルパス(標準治療計画)の導入などによる医療の質の向上、複数の医療機関で診療ネットワークが構築可能、積極的な情報提供(カルテ情報開示を含む)によるインフォームドコンセントの確立などがあげられる。
むろん紙カルテにできることは電子カルテでもできなければならない。
機能のすべてを望んだ場合にはそれなりの努力とコストが必要とされる。
 
 システムの導入効果としては、医療の質の向上(患者さんの満足度向上、診療水準の向上)とコスト削減(経営上の健全な収益、医療費の抑制)が期待される。
 ただし、現在の状況では電子カルテは完成されたものではなく、広く普及するためにいくつかの課題があるのも事実である。
 使用する側のコンピューターアレルギー、マン・マシンインターフェイスの問題、導入経費・運用経費等のコストの問題(国などの事業助成の利用)、セキュリティの問題、システムダウン・災害時の対応、診療情報の標準化、等々の問題を解決していかなければならない。
 
 導入に際してはメリット・ディメリットを認識した上で、現状では何が問題となっているのか、何を目的として導入するのか、何を最も重視するか、どのような手段で実現するのかを明確にすることが大切である。
 今後、準備委員会では電子カルテの勉強会・デモンストレーションを行って行く予定であるが、全体の流れを理解した上で各部署で十分検討していただきたい。
 
 最後に、繰り返しになるが電子カルテは医療の効率化(医療の質の向上とコスト削減)、安全性の向上、患者さんの満足度向上をめざした病院機能実現のために必要な基盤整備の選択肢の一つに過ぎないのである。
 各部署、個々人が電子カルテ導入の議論とともに、今後の病院理念・ビジョンについても考えていかなければならないだろう。

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