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『山と自然を愛でる会』 −16年度活動報告− 
                             第2内科部長 北澤 俊一

 去る10月5日に今年の打ち上げパーティーが開かれました。
一人一人、思い出を語り、会は熱気に包まれ、みんな身体を動かしながら、にこにこしていました。
宴は盛り上がりいつ果てるか分からぬ程でした。お開きになっても、皆はいつまでも名残を惜しんでいました。
 全員のスピーチの中で、一生忘れられないものがありました。
淡々と語られる物語は、私の心の琴線に触れ、涙はハンカチで拭いても拭いてもあふれ出てきました。
その方は、辞表を出したが、山の仲間と別れる事はできないと思い直し、辞意を翻したと言うのです。
 私たちの思い出は深く、結束は固く、組織の支柱に成長すると思います。
自然の前では、上下関係はなく、職種も全く関係がありません。山頂に立てば、誰もが眼の澄んだ、普通の人に過ぎないことが分かりました。

 5月から6つの山に登り、私たちは友情を深めました。
それを育んだ山々をここで振り返ってみたいと思います。

 5月、東根山(928.4m、紫波町)。別名はその形から『こたつ山』。安全な登山が保証される上、カタクリの群落が可憐で、頂上からの360度のパノラマが楽しい山でした。
特記事項…副理事長ご夫妻の参加。初めての山頂焼肉パーティー。則子さんの山岳美化運動。

  6月、焼石岳(1548.1m、胆沢町)。知る人ぞ知る花の名山。奥深いブナ林、豊富な残雪が作る湿原。競いあって咲く高山植物は多彩でした。水芭蕉、ミヤマシオガマ、イワカガミ、ミヤマキンバイなどの名花の中で、圧倒的な魅力を示すのは、真っ白なハクサンイチゲの大群落でした。
特記事項…千葉 覚先生の初参加。第一サンショウウオ発見。建設中の胆沢ダム、小さな丘をブルドーザーが削り続けていました。

 7月、秋田駒ヶ岳(1637.4m、雫石町)活火山。中央火口丘の陥没のため、火山中央に広い凹部、カルデラ(スペインで大釜の意)が見られ、阿弥陀池を抱いています。
山頂付近の高山植物は300種を超え、国の特別天然記念物に指定されています。
小岳のすそ野を覆い尽くす純白のチングルマ、さらには日本で1、2を競そうコマクサの大群落、南限とされるエゾツツジに会うことが出来ました。
 特記事項…きれいで無臭に近いトイレに感動。週に3回も登られ、クリーンなトイレを保っている田沢湖町の皆さんに感謝。東北人のふところの深さを感じました。
 東4階の熊谷さんとお子さんの勇斗くん(4歳)が初参加。次長のブタンガス切れ。燃料を貸してくれた静さんの弟さんに感激。  患者さん急変のため、隊長夫妻の突然の下山。疲れた勇斗君を安全に地上に運んだ小原次長と坂本さんの忍耐強さと責任感。

8月、秀峰岩手山(2038.2m)。(雫石町・滝沢村・松尾村・西根町)熱い蒸気が噴き出る真っ赤な砂礫の山。
隊長が幾度も脚を運んで決定された、究極の登山ルート、御神坂→山頂→網張コース。みんなを頂上に上げて、無事に降ろすための、最善の作戦でした。
 著者は喘息、変形性関節症を患っており、また岩手山のマグマが安定しないため、一生登れないと思っていました。
 本格的な山岳でした。急峻な登り、頂上付近の止まるとずり落ちる砂礫、それを笑う石仏たち、鬼ヶ城の難所、ひたすら長い下山路、脱水、ミオグロビン尿。つらかったけれど、仲間がいるから、勇気と元気をもらって歩き続けました。
今は秋、天気の良い日は岩手山のスカイラインがくっきりしています。手を伸ばせば届く程に感じます。あの南側の長い稜線を歩いたのか。そう思うと自然に微笑みがわいてきます。…雲の上の散歩…。南部富士が親しい友に思えてなりません。
特記事項…施設課の舘沢さんの初参加。当日は甲子園の決勝戦でした。札幌出身の八木先生のラジオから流れる、駒大岩見沢の優勝は感動的でした。そして、命の泉。終了ぎりぎりだったリフト乗り場。12時間に及ぶ登山の終わりは日の名残りでした。

9月、姫神山(1123.8m)(玉山村)。成層火山のようにシンメトリカルな美しい山ですが、実は氷河時代の岩塊から長い時間のなかで生まれたそうです。規模は小さいながら「周氷河性岩塊斜面」というそうです。
 樹齢230年の一本杉は、パワーを持っており、乙女たちは何事かを祈っていました。
登山路は良く整備され、昔の滑って困る登り難さは改善されていました。
生憎の天気で、頂上は霧の国でした。でも、包み込まれているようで、なにか安心でした。
特記事項…雪が積もると、毎朝ゴム長靴で登る人がいるそうです。花の百名山の一つです。田中 澄江さんは、次の啄木の歌は姫神山を歌ったものと推理しています。
    今日ひよいと山が恋しくて山に来ぬ。
            去年腰かけし石をさがすかな。

 10月、三石山(1466m)(雫石町・松尾村)
 大雨の後で、登山路は泥んこ、水たまりばかりでした。それを苦にもせず、登りきると紅葉の赤と黄が迎えてくれました。
 曇りで眺望が利きませんが、雲海の合間 に早池峰山が神秘的でした。雲が生まれ、噴き上がる不思議な場所を発見しました。
頂上での昼食中に雨を迎え残念でしたが、そこから緑の山麓に一本の道が地平線を越えて続いていました。それは1500m級のピーク、小畚山(1467m)、大深岳(1541m)、諸桧岳(1516m)、畚岳(1577.8m)を経由して八幡平へ至る道でした。私は、その道が未来へ続く道に思えました。毎日続く、投げ出したくような仕事を完成に導く道であるのかも知れないと思い、秋霖の山に別れを告げました。
特記事項…とても滑りやすい登り道でした。笹の根が土を掴んでいるところ以外は、転倒者続出でした。
 
  宇宙の前では、皆同じと空海は言います。山や雲や空や花々の前では、みんな小さく等しいホモ・サピエンスです。山に行けば人に会える。職場では会えない。その真実が、今年の朝(あした)の教えだったと思います。
 山が恋しい人は冬に足腰を鍛えておいてください。春のカタクリの群生を夢見て、長い冬を越えていきましょう。
 来年は、もっと素晴らしく、さらに深い人と人との出会いがあると思います。
 稿を終えるにあたり、春の登山に参加され、打ち上げパーティーにも出席して頂いた小暮副理事長に心から感謝致します。

 

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