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ドクターニューフェイス                      眼科 田澤 豊


  当院の眼科診療に携わって −糖尿病網膜症を中心に−

 医師になって以来43年、そのうち眼科教授として30年間お世話になった岩手医科大学を本年3月に定年退職した後に、盛岡友愛病院で毎週火曜日、眼科の外来診療を担当させていただいております。 
 当院の眼科は平成8年に開設されましたが、それ以前から先代の小暮重信氏とは懇意にさせていただき、以後、現在の長澤 茂理事長、小暮信人副理事長に至るまで大学の関連病院としてお付き合いいただいた関係から、退職後に当院の眼科診療のお手伝いをすることになりました。少ない診療日数ではありますが、診療日には有能な看護師さんや視能訓練士さんの協力を得ながら、沢山の患者さんに対面し、診療に精出しております。
 本院の眼科外来では糖尿病患者さんの目の管理が大きな割合を占めております。
そこで、今回は糖尿病網膜症について簡単な解説をしてみたいと思います。
 糖尿病の眼合併症は数多くありますが、その中で頻度が最も多く、重要な疾患は網膜症です。
重要なという意味は、網膜症の初期には自覚症状がないまま静かに潜行し、眼の症状を自覚したときには眼の中では既にかなり進行しており、これを正常に戻したり、その後の進行を抑えることはかなり困難で、失明状態に至る危険性も高いからです。
 特に糖尿病が若年性、インシュリン依存性、長期罹患の場合にその危険性が大きくなります。
さらに、糖尿病患者さんに特徴的な病識の低さが網膜症の悪性化に拍車をかけます。
 網膜症の発症は、他の臓器の糖尿病による変化と同じで、細小血管の閉塞と神経細胞の機能低下とが根本原因です。この初期変化は、視力に関係する網膜の中心部(黄斑部)よりもやや周辺に寄った部分から始まるので、自覚しにくいのです。
網膜の最小血管の閉塞は、毛細血管網と小〜中血管を閉塞させ、毛細血管瘤や小出血、滲出などを生じます(単純網膜症)。
やがて血流が途絶える領域が網膜の所々に生じ、これが血管新生を誘発させることになります。
この時期(前増殖網膜症)になってもほとんど異常を自覚することはないのです。
 しかし、この時期の変化は、眼底検査や写真撮影によって発見が容易で、この病期に発見できれば、レーザー網膜光凝固などによる対処によってその後の進行を阻止することが可能です。
近年は、健康診断の検診に眼底検査が含まれて、この時期の眼底変化から全身の糖尿病を初めて指摘される例も増えています。
 ところが、前増殖網膜症の時期に発見されなければ、病変は一気に進行し、黄斑部の浮腫、新生血管からの大出血、結合識の増殖などによって突然の高度の視力障害をきたす時期(増殖網膜症)に入っていきます。
さらに、増殖組織の牽引による網膜剥離や眼内全体の血管新生による血管新生緑内障など、失明につながる恐ろしい合併症に発展してしまうことにもなります。
病識の乏しい患者さんでもさすがにこの時期には眼科を受診するのですが、ここまでに至ってからの治療は困難を極めます。
十数年前まではこの時期になると、失明の危険性が濃厚であることを告げねばならないつらい状況になっていました。
しかし、最近は増殖網膜症およびその合併症への手術治療の技術が発達し、ここまで重症化した患者さんでも失明を回避し、日常生活に困らない程度の視機能を維持させることが可能になってきております。
このように、糖尿病網膜症は早期発見と管理の継続が何にも増して大切ですが、幸いに、内科を始めとして他科の先生方の協力によって網膜症の早期の発見と管理とが円滑に行われる時代になりました。
本院での私の診療はまだ4か月ほどですが、本院の糖尿病患者さんも他科の先生方のご理解によって眼科的管理が良好に行き届いている印象を持っております。
今回は、糖尿病網膜症について述べましたが、その他の眼疾患も含めで重篤化する患者さんが本院からは出ないように、引き続き努力して参りたいと思います。ご指導、ご協力のほどをよろしくお願い申し上げます。

 

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